この記事では、こんな疑問にお答えします。
麻薬取締官と麻薬取締員は、「官」と「員」の一文字違いですが、全く違います。
麻薬取締官は厚生労働省に所属する国家公務員、麻薬取締員は、都道府県に所属する地方公務員です。
麻薬取締員も薬物事件に対する取締権限を有していますが、実情は麻薬取締官ほど取締は行なっていません。
詳しく解説していきます。
麻薬取締員とは
各都道府県の薬事担当課の職員から選ばれた人が、知事から任命を受けて麻薬取締員になることができます。
簡単に言えば、県庁の薬務課の職員の中から、数名が麻薬取締員に任命をされています。
麻薬取締員の権限
麻薬取締員の権限は、麻薬取締官と同じです。
薬物犯罪に対しては、捜査権があり身分証(警察手帳のようなもの)も持っています。
もちろん、警棒や拳銃も持つことができます。
麻薬取締員の仕事
では、麻薬取締員も薬物密売人を逮捕しているのか?
もちろん、密売人の逮捕もできます。
しかし、麻薬取締員は県庁薬務課の職員であり、いつもは薬事行政の仕事をしています。
むしろ、薬事行政の仕事が主です。
保健所勤務や県立病院で働いていた人が、急に薬物の取締をやれと言われても、なかなか難しいのが実情です。
では、どんなことをやっているのか?
麻薬取締員が取り締まるのは「医療事件」が多いです。
医療事件とは
医療事件とは、医療現場で起こる麻薬等に関わる事件です。
「処方箋偽造事件」や医師による「麻薬の無免許施用事件」、「薬剤師による向精神薬横流し事件」等です。
処方箋偽造
麻薬及び向精神薬取締法70条に「麻薬処方箋を偽造又は変造した者は一年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と定められています。
向精神薬処方箋も同様に偽造・変造する行為は犯罪です。
「コピーされたハルシオンの処方箋で調剤してしまった」
こんな通報が薬局からあった場合、麻薬取締員が捜査することがあります。
ハルシオン等の睡眠薬の多くは向精神薬に指定されており、インターネットの闇サイトで高値で売買されるので、処方箋をコピーしてたくさん薬を手に入れようと考える人がいるんです。
捜査は麻薬取締官と連携して行うことが多く、「薬剤師からの聞き取り」等を行い、犯人を割り出します。
そして、犯人からも事情を聞きます。
(逮捕して事情を聞くか、逮捕せずに事情を聞くかはケースバイケースですが、逮捕する場合は麻薬取締官と一緒に捜査することが多いです。)
最終的に検察官に事件送致します。
医師による麻薬の無免許施用
医療用の麻薬は、がんの痛み止めや手術中の痛み止めに使うので、医療現場では、なくてはならないものです。
医師であれば、誰でも麻薬を処方できると思うかもしれませんがそうではありません。
麻薬を使う場合「麻薬施用者免許」という免許が必要です。
医師であれば申請すれば取れますが、2年ごとに更新する必要があります。
医師が麻薬施用者免許を持っていないのに、麻薬を患者さんに使ってしまった場合、違反になってしまうんです。
医師が麻薬免許を持たずに、麻薬を使っていた場合、医者から話をきいたり、カルテの確認する等の捜査を行います。
麻薬取締員は覚醒剤等の取締というよりは、上のような医療事件の捜査をすることが多いです。
麻薬取締員を目指せる?
麻薬取締員は、県庁薬務課の職員の中から選ばれますが、任期は2から5年の県が多いです。
任期を終えれば、また、県の職員として働きますので、ずっと麻薬取締員として仕事をすることはできません。
なので、「麻薬取締員がやりたくて県庁に入る」というのは現実的ではありません。
薬物取締の仕事をしたい人は「麻薬取締官」を目指すべきです。
麻薬取締員のまとめ
麻薬取締員は、都道府県庁薬務課に所属する職員から選ばれ、薬物事件の司法権を持っています。
基本的には行政の仕事をしていますが、医療事件などを捜査することもあります。
ただ、麻薬取締官のように、薬物密売人の捜査をするこは、ほぼないです。
麻薬取締員の任期が終われば、また、行政の仕事や保健所での仕事をすることになります。